本会議で平成30年度一般会計予算に賛成の討論をしました。

平成30年3月31日定例会(第1回)

私は、シブヤを笑顔にする会を代表いたしまして、議案第20号 平成30年度渋谷区一般会計予算に賛成の立場から討論をいたします。平成30年度は多くの制度が変わる転換点です。第7期高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画の初年度であるだけでなく、2年ごとに行われる診療報酬の改定と3年ごとに行われる介護報酬の改定との同時改定があり、さらに国民健康保険の広域化という国保発足以来の大改革があります。
障がい者福祉においても第六次渋谷区障害者保健福祉計画、第5期渋谷区障害福祉計画、第1期渋谷区障害児福祉計画の初年度です。また、何より新庁舎がオープンすることで、ICT基盤整備を初め各種区民サービスの向上、職員のワークスタイルの変化など区政運営に改革をもたらす重要な年度です。
そんな中、渋谷区の現状を見てみると、人口は年少人口、生産年齢人口、老年人口の年齢3区分全てにおいて増加し、全国の高齢化率が27.3%と過去最高を記録する一方、渋谷区の高齢化率はむしろ低下傾向にあり、19%を割り込みそうな情勢です。
平成28年度に策定された「渋谷区まち・ひと・しごと創生総合戦略」によれば、渋谷区の人口は平成37年の22万3000人をピークに緩やかな減少に入ると推計されています。現在の人口が約22万5000人ですので、既に外れています。しかし、平成37年といえば2025年問題の年ですので、このころを境に高齢化が進むことは少なくとも覚悟する必要があると思われます。
こうした宿命的な課題を前提に、まだ余裕のある今だからこそ、時代の節目となる平成30年度を、イノベーションの年とすることができるかどうかで結果は大きく変わると考えます。高度化、複雑化する時代のニーズを的確に捉え、喫緊課題へのスピードある対応はもちろんのこと、将来を見据えた行財政運営が求められます。

さて、平成30年度の一般会計予算案でありますが、歳入歳出予算額は937億6800万円と前年度当初予算に対して額にして11億1600万円、率にして1.2%の増であります。これは当初予算として過去最大であった前年度予算をさらに上回る大型予算です。過去最大ではありますが、重立った歳出の構成を見ますと無計画に費やされるものではなく、喫緊課題への対応はもちろんのこと、未来への投資にも多くの予算を割いている点をまず評価したいと思います。増収が見込まれる今の機会に未来に投資をすることで、将来の区民負担を抑えることができるからです。
さらに、ICT化、AI化を初め数々の先進的な取り組みを盛り込みながら、生活文化の醸成と発信に注力している点も評価いたします。区民が誇れる成熟した国際都市を実現するには、人、もの、情報の集積によるエネルギーを生かすだけではなく、地に足の着いた生活文化を育て地域の足腰を強くすること、課題先進国と言われる日本において、世界に誇れる自治体としてその具体像を発信していくことが重要だと考えるからです。

歳入に目を向けますと、大宗を占めます特別区税は490億9166万6000円となり、額にして20億9698万2000円、率にして4.5%の増収です。特別区全体でも、景気回復を受けて調整三税の税収が上振れしたことで特別区交付金は20億円となり、額にして7億円、率にして53.8%の増が見込まれます。一方、地方消費税交付金は清算基準の見直しにより額にして8億8197万5000円、率にして11.3%のマイナスとなりました。そんな難しいかじ取りが求められる中、複雑化する区民ニーズに応えるべく編成された大型予算案には相当の苦心があったものと拝察いたします。
以下、事業分野に沿って検証してまいります。

まず、子育て分野についてです。
喫緊課題である待機児童対策には38億4700万円をかけて対応します。新設認可園の開設で722人の定員増が図られるほか、居宅訪問型保育の拡大、空きスペースを活用した期間限定保育、企業主導型や認可外保育施設における待機児童枠の確保等、様々な手法が複合的に活用されています。同時に、保育施設のICT化推進に乗り出すこと、さらには助言、指導を行う専門巡回員の設置や区内施設での体系的な研修の導入によって若手保育士を育成していくことは、現在だけでなく未来への投資であり、将来にわたる保育資産になると考えます。
保育士確保に関しては、他職種との賃金の格差を訴える意見もありますが、平成27年度から平成28年度にかけて行った国による公定価格の処遇改善加算及び東京都の補助金によって保育士の平均月額給与は28万7321円まで改善し、さらに、本年度に行われた公定価格の処遇改善加算及び東京都による補助金のアップによって平均月額2万7000円の上乗せがありました。それとは別に、中間層の賃金アップのため国のキャリアアップ枠新設による月額最大4万円の給与加算が実施され、既に全職種平均と同水準に達しています。その上、渋谷区では借り上げ社宅の賃料、礼金、引っ越し代の補助もあります。
東京都内においては保育士不足解消のポイントはもはや賃金ではなく、残業などの負荷の軽減や業務効率化、対人コミュニケーション等にあると言えるでしょう。その意味でも、保育のICT化や専門巡回員の設置による保育士のスキルアップ施策は効果があるものと期待しております。
また、産後鬱を予防するための宿泊型産後ケア事業や要支援家庭を対象とした子どもショートステイ事業は、ともにレスパイトに活用できる点で効果が高いと評価いたします。渋谷区版ネウボラ構築への第一歩として、未来への投資につながるものと考えます。

次に、教育分野ですが、2年目に入るICT教育の本格運用が開始されます。渋谷区の特徴は、セルラー回線を備えたタブレット端末の導入によって学校、自宅、校外学習など、いつでもどこでも共同学習を可能にしたことです。Wi-Fiだけではできなかった指導法の研究、事例の積み重ね等をお願いし、より高いレベルでの渋谷モデルの確立を期待いたします。
また、情報モラル教育が課題になると思いますが、リスクがあるからといって過度にインターネットの機能を制限してしまうと情報活用能力が身につきません。本年度は中学校でもインターネットへのポータルにYahoo!きっずを使用していたようですが、中学生がこれで十分な研究ができるとは思えませんので、学校が管理できる義務教育のうちに、もっと自由な使い方の中で、情報モラルも含めた情報リテラシーの習得に努めていただければと思います。
学校給食につきましては、我が会派がかねてから要望していた栄養士の小中学校全校配置が実現し、高く評価いたします。
コミュニティスクールについて、学校運営協議会の運営費及びコーディネーター費が計上されています。地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正・施行され、全ての公立学校がコミュニティスクールになることを目指し、学校運営協議会の設置が努力義務化されました。渋谷区では本年度、代々木山谷小学校が新たに指定されたことによって小学校では8校中4校目、中学校は既に全校が指定されています。
渋谷区はもともと地域と学校とのつながりが強く、コミュニティスクールに適した土壌があります。地域と学校が連携、協働しながら地域で学校を運営し、逆に学校を核とした地域づくりを進めることにアドバンテージがあると見ています。小学校においても全校指定に向けた計画が図られていることを高く評価いたします。
また、かねてから学校運営協議会はもっと意思決定機関として機能すべきと提言してまいりました。熟議の中で何かを進めようとすると予算が壁となることが多く、平成30年度予算案の中で、学校運営協議会が活動充実のために計画した取り組みに対してその内容に応じた補助金を交付する仕組みを創設することは、大きな前進と高く評価いたします。

次に、福祉分野です。
高齢者福祉については、5月につばめの里・本町東施設が開設されることで特別養護老人ホームの区内ベッド数は631床から731床に拡大し、併設ショートステイも90床から120床に拡大するほか、認知症高齢者グループホームも18人増えて101人となります。
また、都営住宅の建替え時移管制度を活用し、地域の実情に合った複合施設として恵比寿西二丁目複合施設の建設に着手します。区営住宅のほか高齢者福祉施設、障がい者福祉施設及び保育園を併設した地域福祉の中核施設として期待され、誰もが住みなれた地域で安心して住み続けることができる積極的な施設整備を評価します。
高齢者が生涯元気で活躍できるように支援する生涯現役サポートセンター設置に向けた準備予算、1427万円も計上されています。生きがいを持って生活してもらうことが豊かな人生につながり、健康寿命を延ばすことにもなると期待します。
障がい者福祉については、地域の相談支援事業所を指導、育成し、また事業所間のネットワークづくりや情報共有を促進する基幹相談支援センターが開設されます。体系的な相談体制ができることで地域の相談事業の底上げになるものと評価いたします。
新庁舎移転後に知的障がいのある人を臨時職員として雇用し、ジョブコーチも配置します。共生する社会を実現、障がい者の自立及び社会参加の支援といった障害者基本法の理念や、住みなれた場所で可能な限り必要な支援、社会参加の機会の確保といった4月に施行される改正障害者総合支援法の基本理念に沿った施策であり、障がい特性に応じた自立支援につながるものと期待します。

次に、健康・スポーツ分野についてです。
15平方キロメートルの運動場プロジェクトでは、道路等の空間を活用して子どもから大人まで気軽にスポーツができる環境を整備します。各地域で自主的に運営ができるように支援していく方針で、地域コミュニティの活性化を促進するものと考えます。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた関連事業も、リアル観戦の拡充や文化プログラムの拡大及び地域連携、区独自のボランティア制度の創設と、2年後に向けて充実させています。原 大智選手が平昌オリンピックで銅メダルを獲得したことで機運が一気に盛り上がっているところであり、多くの人が参加しやすい周知と運営をお願いいたします。

防災・環境分野です。
新庁舎の完成を機に防災センターが新庁舎内に移転するのに合わせ、新防災システムを導入する予算が計上されています。スマートフォンやタブレットを活用し、区、区民、来街者が互いにつながるシステムです。
また、児童の安全を確保するため、区立小学校18校全校の通学路に設置されている防犯カメラを計50台増設します。
また、新環境基本計画が目指す目標の実現に向け、区民や区内事業者を初め渋谷区に集まる在勤・在学者及び来街者など、多くの人々に普及啓発を行います。
さらに、都市環境の改善という視点では、防災性の向上、交流空間の創出など多様な機能を有する新宮下公園の工事が着工します。三井不動産株式会社とのPPP事業として、民間の資金とノウハウを活用しながら、小さな財政負担で豊かな公共サービスを提供する象徴的な事業となりそうです。

PPPについては、まだ誤解した反対意見もあるようですので一言申し上げますが、大手企業をもうけさせるために区の資産を使うのではなくて、公共サービスを向上させるために、専門技術や経営ノウハウを持つ民間事業者に事業のリスクを負担してもらっているのです。併設する商業施設や隣接するホテルの運営利益を見込んで公園を建て替える仕組みですが、区が直接運営しても、恐らく赤字になるでしょう。こうしたリスクを最も管理できる、そういうものにですね、リスクを負担してもらうことで事業全体のコスト削減と質の高い公共サービスの提供が同時に可能になります。
新宮下公園整備事業では、ディベロッパーやホテル経営に精通した事業者が手がけて初めてリスクをカバーできるのであって、当然ですが、リスクを負担する者がリターンを得るという健全な経済原則にのっとり、自治体もコストの削減と公共サービスの向上が達成できます。
安全・安心なまちづくりのために様々な機能を駆使している点、高く評価いたします。

最後に、コミュニティ分野です。
区民はもとより渋谷で働く人、学ぶ人、遊ぶ人等の技術力、アイデアを集め社会的課題の解決を図ってきた「かもづくりフューチャーセッション」と同様の手法を使って、開発余地の大きい笹塚・幡ヶ谷・初台・本町地区で進めているプロジェクト「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」が実践段階に入ります。新たな協働型のまちづくりとして評価いたしますので、今後は各プロジェクトチームが自走できるような支援をお願いしたいと思います。
また、産官学民連携による組織体、一般社団法人渋谷未来デザインの設立に伴う出資金も計上されています。産官学民が連携し、領域を超えてアイデアや才能を結集することによって新しい公共空間の活用を見出す趣旨はよいと思いますが、共同出資者である協業パートナー以外の事業者が排除されないよう要望しておきます。
渋谷おとなりサンデーが2年目に入ります。平成30年度には笹塚・幡ヶ谷エリアでもショーケースが予定されているとのことで、ササハタハツプロジェクトと相まって地域の魅力を引き出すきっかけになればと期待します。顔見知りになった住民同士がいざというときに助け合える関係まで信頼を深めてもらえれば、地域の足腰が強くなると考えます。
ちなみに、ふるさと納税の影響額は17億円の見込みです。前年が14億6000万円でしたので、額にして2億4000万円、率にして16.4%の増と大きな打撃を受けています。ただ、総務省が昨年7月に発表したふるさと納税の寄附総額は前年比1.7倍で過去最高でしたので、正直なところ、もっと影響があってもおかしくないと予想しておりました。渋谷区が好きで渋谷区に住み愛着を持って納税してくれている人が一定割合いるのかもしれません。
影響額が大きいからといって、渋谷区が返礼品競争に参加し、地方の苦しい自治体から財源を奪い取るようなことはすべきでないと考えています。区民の皆さんに気持ちよく渋谷区に納税してもらうという意味でも、長谷部区長がよく口にされるシティプライドの育成は重要であり、コミュニティ分野の施策全体を通じてその工夫がうかがえる予算になっております。

以上述べましたように、平成30年度渋谷区一般会計予算は喫緊の課題にスピーディに対応しながら未来への投資にも多くの予算を割いている点、また、数々の先進的な取り組みをするとともに生活文化の醸成と発信に注力している点を高く評価いたします。
結びになりますが、シブヤを笑顔にする会は誰もが笑顔で暮らせる渋谷区を実現するために全力でその役割を果たしていくということを表明いたしまして、議案第20号 平成30年度渋谷区一般会計予算の賛成討論といたします。
ありがとうございました。