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本会議で平成28年度一般会計予算に賛成の討論をしました。

私は、シブヤを笑顔にする会を代表いたしまして、議案第30号 平成28年度渋谷区一般会計予算に賛成の立場から討論をいたします。

平成28年3月31日本会議

平成28年3月31日本会議

3月の月例経済報告で政府は、景気判断を5カ月ぶりに下方修正しました。「海外経済で弱さがみられており、中国を始めとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある」と指摘しており、GDPの6割を占める個人消費の低迷、企業の収益環境の悪化も懸念されます。また、パリ、ブリュッセルと続いたテロの脅威、北朝鮮の核兵器開発疑惑など、経済環境は様々な外的要因による下振れリスクが存在しておりまして、歳入の中長期的な見通しは予断を許しません。このような経済情勢の中でも、複雑化・高度化する区民ニーズを的確にとらえ、世界に誇れる自治体として責務を果たしていくためには、攻守にわたりバランスの取れた行財政運営が求められます。

さて、平成28年度の一般会計予算案でありますが、歳入歳出予算額は845億5200万円と、前年度当初予算に対して、額にして12億800万円、率にして1.4%の減であります。これは、新庁舎・公会堂整備事業における仮庁舎整備が完了したことによる歳出予算の減が主たる要因ですが、歳入予算に目を向けますと、区政の政策効果ともいえる生産年齢人口の増加と、前年までの景気回復に伴う区民所得の増加とによって、特別区民税が13億4600万円の増収、率にして3%のアップが見込まれる反面、特別区交付金が前年比70%ものダウン、39億3200万円の減収となっており、様々なアイディアで勝負するスタイルの長谷部区長が、初めて臨んだ本格予算編成は、相当に苦心を重ねられたものと拝察いたします。しかしながら、そのままであれば数十億円分の区民サービスをあきらめざるを得ない状況にあって、これまで積み増してきた基金を取り崩すことなく、区民福祉、防災、待機児対策等の多岐にわたる区民課題への対応を強化しつつ、前年度とほぼ同規模での予算編成を実現されたことを、まず評価したいと思います。そして、予算中には長谷部区長が目指す特色ある新規事業が積極的に盛り込まれています。4月に開局を迎えるコミュニティFM「渋谷のラジオ」、避難所の備蓄食料品のアレルギーフリー化とペット同行避難への対応、シリコンバレーヘの青少年派遣研修、性的マイノリティとの分野別意見交換会や教職員へのセクシャルマイノリティ研修、民間施設を活用した保育施設拡充および先駆的幼児教育・保育の研究、東京オリンピック・パラリンピックを契機とした障がい者スポーツへの支援や障がい者への理解と新たな価値観の創造、様々な人たちが街づくりの当事者として関われる「アーバンデザインセンター渋谷」の設立、新宮下公園等整備事業・道玄坂一丁目地区再開発事業にみられる安全で快適な国際都市整備など、将来にわたってあるべき渋谷区の姿がうかがえる多くの施策が組み込まれています。

限られた財政にあってこれを可能にしているのは、区長がよく口にされている「公民の連携・協業」の推進であり、様々な分野で強みを持つ区内企業の技術・ノウハウ・人的資源を区政に活かし、共に発展していく施策によるものと考えます。区民負担を最小限に抑えつつ、豊かな公共サービスを生み出すレバレッジの効いた予算編成は、いわば「民間活力推進予算」として高く評価いたします。以下、重点施策に沿って検証してまいります。

まず、災害対策です。発災時には、ヒカリエの防災センターで状況を集中的に把握し、渋谷区内の小中学校など32か所の避難所、26か所の帰宅困難者支援施設、10か所の出張所と、情報ネットワークを形成し、渋谷区防災ポータルサイト、防災無線、防災メールなどでの情報を発信していく体制が整って おりますが、平成28年度はさらに、災害に強い情報インフラと言われるFM放送を活用した「渋谷のラジオ」での情報発信や、東京電力が設置する「地上用変圧器」を利用した「災害時帰宅困難者支援施設地図」の増設を予定し、区内主要幹線道路沿い18か所に案内板の掲示を実施します。
平成25年「渋谷区地域防災計画」によれば、区内滞在者推計52万9282 人のうち、帰宅困難者は42%の22万2342 人であり、職場や学校などの所属場所がないために発災時に屋外で滞留する人数は5万3509 人と推計されています。こうした帰宅困難者を的確に誘導することによって、区民が避難する避難所への流入が避けられ、混乱を防止するのに有効な手段になるものと評価いたします。
また、避難所では、備蓄食料をすべて入れ替え、アレルギーフリー食3日分を用意します。わが会派が強く要望していたペット同行避難対策も導入され、ペットを飼育する区民も安心して避難できる環境が整います。これをきっかけに、今後はペットフード等の避難所配備に留まらず、畜犬登録の促進によって飼育実態を把握し、「ペット疎開」実施に向けた施策拡大も期待いたします。
また、平日に実施していた総合防災訓練を休日に移行し、観る訓練から体験する訓練へ拡充するほか、渋谷駅周辺再開発事業等の進捗に合わせ、PDCAサイクルにより防災対策を見直す方針が示されており、実情に合わせた「生きた防災」として評価いたします。

次に情報発信力の強化についてです。平成28年4月に開局を予定しているコミュニティFM放送局「渋谷のラジオ」は、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてますます増加が予想される外国人観光客への情報発信の強化とともに、一方通行になりがちな広報メディアを区民参加型にすることによって、地域コミュニティの活性化を促す狙いがあります。地域の行事や地元のスターを紹介するなど、区民の交流が図られる番組づくりが定着すれば、 災害などの緊急時も防災無線を補完する役割が期待できると考えます。
広報紙「しぶや区ニュース」が刷新され、8ページから12ページへの増ページと、配布方法を新聞折込主体から全戸ポスティング主体の配布方法に変更することによる、12万部から16万6000部への増部数が予定されています。「渋谷のラジオ」同様、区民参加型の特集・企画ページの充実によって、区民の区政に対する関心が高まること、地域活動への積極的な参加が促進されることを期待します。

次に子育て支援についてです。区内保育施設においては、平成23年度から平成27年度の5年間で1376人の定員拡大を実施してきましたが、さらに平成28年度360人、平成29年度274人、平成30年度536人の定員拡大を行う計画で、区長をはじめ執行部の真剣なご努力の跡がうかがえます。しかし認可保育園の申し込み者は平成27年4月に1464人であったのが、平成28年4月では1735人と加速度的に増加しており、待機児ゼロの実現に向けて様々な手法が求められています。
平成28 年度は、25億1200万円を計上し、認定こども園1園の新設、民間施設を活用した保育園2園の新設等で、保育施設の園児定員を360 人増やせる点、また、区内での土地の確保が困難な状況を考慮し、民間施設等を活用した賃借物件による保育施設の開設にあたっては、4000万円の予算計上により、国の制度に基づく補助に上乗せする形で、渋谷区独自の賃料補助制度を新設する点を評価いたします。今後も様々な手法を複合的に活用しながら、さらなる定員拡大をお願いします。
一方、わが会派がかねてから提言していた特色ある幼児教育・保育施策が研究段階に入ることになり、より質の高い教育メソッドを追求する姿勢を支持いたします。子ども一人ひとりの個性を尊重した先駆的幼児教育・保育を実現するために、シュタイナー教育やレッジョ・エミリアアプローチについて実りある視察を期待します。

平成28年3月31日本会議

平成28年3月31日本会議

次に人材育成についてです。未来を担う人材を育成するため、フィンランド、中国への青少年派遣研修に加え、新たにシリコンバレーに区立中学校の2 年生16名を派遣します。スタンフォード大学や世界最先端企業での現場体験が  計画されているということで、グローバル社会に対応した国際的視野を拡げる絶好の機会と高く評価します。ここでお願いしたいのは、IT産業を学ぶというだけではなく、経営という職業を学んでほしいと思います。日本のキャリア教育では、どうも経営を職業のひとつとして捉えられていないところがあり、技術力は高いがビジネスでは勝てない日本企業の弱点に繋がっていると感じています。ITベンチャーの集積地シリコンバレーで学び、世界で活躍する経営者をめざす人材が渋谷区から出てくることを期待します。

次に高齢者福祉についてです。すべての高齢者が、住み慣れた地域に安心して住み続けられるという基本理念を実現し、高齢者個々の事情に応じた多様なニーズに応えるため、単身高齢者向け住宅として幡ヶ谷原町住宅がオープンします。旧「都営幡ヶ谷原町住宅」を、建替時移管制度を活用して整備した物件ですが、管理戸数も東京都管理時の6戸から37戸へと6倍以上に増加します。さらに、幡ヶ谷二丁目に計画中の複合施設においても38戸の高齢者、障がい者、一般世帯向け住宅の建設を進めるほか、都営恵比寿西アパートの 移管に合わせ区営住宅をベースとした複合施設の計画もあり、高齢化が進む中、高齢者の住環境向上に向けた取り組みが進んでいることに安心感を覚えます。
増加が予想される認知症高齢者への施策としては、早期発見・早期対応体制を強化するとともに、認知症高齢者本人やその家族への支援を行います。認知症の症状が見られるが、支援や医療・介護を拒否している人に対し家庭訪問等を行う認知症初期集中支援チームを、現在の1 チーム から4 チームに拡充し更なる早期対応を図るとともに、認知症高齢者本人を地域で支える体制強化のため、認知症サポーター養成講座の拡充を図るなど、大きく前進しています。

次に安心して暮らせるまちづくりです。繁華街における悪質な客引き・路上スカウト行為を禁止するため、平成26年に「渋谷区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」を制定し、まちの治安や区民・来街者の快適性維持に努めてきましたが、依然として違反行為が後を絶たない状況にあることから、警察官OBを客引き行為等防止指導員として配置し、条例の実効性を担保します。
受動喫煙対策としては、世界有数の観光スポットとなった渋谷駅前スクランブル交差点に面するハチ公前広場の2か所の喫煙所を撤去・移設し、跡地にネーミングライツによるパウダールームを整備します。国際都市にふさわしい施策と評価いたします。

次に新宮下公園等整備事業など渋谷駅周辺再開発についてです。新宮下公園等整備事業は、老朽化した宮下公園と渋谷駐車場を、東京オリンピック・パラリンピック開催までに一体的に整備し、「世界に誇れる立体的な都市公園」とするため、昨年の第4回定例会で三井不動産株式会社との基本協定締結および定期借地権の設定について可決・承認した事業です。民間の資金とノウハウの活用により、小さな財政負担で豊かな公共サービスを実現する  PPPを基本スキームとしていますが、反対意見の中には公設民営と混同しているように思われる主張もありますので、ひと言申し添えたいと思います。
平成23年に改正PFI法が施行され、民間が一定のリスクを負担する代わりに公共施設の運営権を得られるようになりました。それとともに、民から官へ事業提案ができる民間提案方式、いわゆるプロポーザル方式の導入が認められたことによって、従来の行政機関の経験と発想ではできなかった事業が実現可能になりました。つまり、一定の条件を満たしていれば、例えば公園の価値を最大限に活かすためにホテルを一体的に整備するような付加価値を伴った民間提案も可能です。その際、「企業の儲けのために区の資産を利用するのは問題」というような意見もあるようですが、民間施設部分が儲かるとは限らないわけで、儲かるかどうかは当該民間事業者の経営努力によるものです。リスクを分担した者がリターンを得るという健全な経済原則に基づいています。また、公園・駐車場等の区施設部分については区が事業費を試算できますが、民間事業者がリスクを負担する民間施設部分の事業費まで区が関知できるものではなく、公が決めて民が運営する「公設民営」とは根本的に違うのです。本事業は、プロポーザル方式のPPPによって民間事業者のノウハウをフルに活用し、「緑と水の空間軸の形成」、「地域の賑わいの創出」を実現することによって新宮下公園が観光拠点となるほか、防災機能も強化されるなど、優れたモデルケースになるものと確信いたします。

次に、オリンピック・パラリンピックへの取り組みと障がい者への理解促進についてです。すべての公立小中学校・幼稚園をオリンピック・パラリンピック教育推進校に指定し、オリンピック・パラリンピックについての学習や諸外国の歴史・文化など国際理解を促進する教育、体育授業等の改善、部活動の推進、オリンピアン・パラリンピアン、アスリートやスポーツ指導者との交流など、幼児・児童・生徒の発達段階に応じて様々な取り組みを実施します。
さらにパラリンピックの可能性と新たな価値を提起するため、区内で競技が行われるウィルチェアーラグビー、卓球、バドミントンについて、練習会場を提供するとともに、パラリンピアンらのデモンストレーションによる競技紹介や、パラリンピック競技のルールや楽しさを伝えるオリジナル紙芝居など、特にパラリンピックに関する取組への力の入れ方は特筆に値します。パラリンピアンが華麗に挑戦する姿を身近で感じ、限りない人間の可能性に共感することによって、心のバリアフリーが「レガシー」として定着することを願って大いに賛成いたします。

以上述べましたように、平成28年度渋谷区一般会計予算は、区民福祉を確実に増進させ、教育文化の向上を図りながら、小さな財政負担で豊かな公共サービスを実現する「民間活力推進」予算であります。区政課題の解決に向けてスピーディーかつクリエイティブに取り組もうとする長谷部区長の決意を示した予算編成と受け止め、高く評価するものであります。

最後に、シブヤを笑顔にする会は、渋谷区を、誰もが笑顔で暮らせる街にするために、全力でその役割を果たしていく覚悟でおります。そのことを表明いたしまして、議案第30号 平成28年度渋谷区一般会計予算に賛成の討論といたします。ありがとうございました。

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