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本会議で平成30年度一般会計予算に賛成の討論をしました。

平成30年3月31日定例会(第1回)

私は、シブヤを笑顔にする会を代表いたしまして、議案第20号 平成30年度渋谷区一般会計予算に賛成の立場から討論をいたします。平成30年度は多くの制度が変わる転換点です。第7期高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画の初年度であるだけでなく、2年ごとに行われる診療報酬の改定と3年ごとに行われる介護報酬の改定との同時改定があり、さらに国民健康保険の広域化という国保発足以来の大改革があります。
障がい者福祉においても第六次渋谷区障害者保健福祉計画、第5期渋谷区障害福祉計画、第1期渋谷区障害児福祉計画の初年度です。また、何より新庁舎がオープンすることで、ICT基盤整備を初め各種区民サービスの向上、職員のワークスタイルの変化など区政運営に改革をもたらす重要な年度です。
そんな中、渋谷区の現状を見てみると、人口は年少人口、生産年齢人口、老年人口の年齢3区分全てにおいて増加し、全国の高齢化率が27.3%と過去最高を記録する一方、渋谷区の高齢化率はむしろ低下傾向にあり、19%を割り込みそうな情勢です。
平成28年度に策定された「渋谷区まち・ひと・しごと創生総合戦略」によれば、渋谷区の人口は平成37年の22万3000人をピークに緩やかな減少に入ると推計されています。現在の人口が約22万5000人ですので、既に外れています。しかし、平成37年といえば2025年問題の年ですので、このころを境に高齢化が進むことは少なくとも覚悟する必要があると思われます。
こうした宿命的な課題を前提に、まだ余裕のある今だからこそ、時代の節目となる平成30年度を、イノベーションの年とすることができるかどうかで結果は大きく変わると考えます。高度化、複雑化する時代のニーズを的確に捉え、喫緊課題へのスピードある対応はもちろんのこと、将来を見据えた行財政運営が求められます。

さて、平成30年度の一般会計予算案でありますが、歳入歳出予算額は937億6800万円と前年度当初予算に対して額にして11億1600万円、率にして1.2%の増であります。これは当初予算として過去最大であった前年度予算をさらに上回る大型予算です。過去最大ではありますが、重立った歳出の構成を見ますと無計画に費やされるものではなく、喫緊課題への対応はもちろんのこと、未来への投資にも多くの予算を割いている点をまず評価したいと思います。増収が見込まれる今の機会に未来に投資をすることで、将来の区民負担を抑えることができるからです。
さらに、ICT化、AI化を初め数々の先進的な取り組みを盛り込みながら、生活文化の醸成と発信に注力している点も評価いたします。区民が誇れる成熟した国際都市を実現するには、人、もの、情報の集積によるエネルギーを生かすだけではなく、地に足の着いた生活文化を育て地域の足腰を強くすること、課題先進国と言われる日本において、世界に誇れる自治体としてその具体像を発信していくことが重要だと考えるからです。

歳入に目を向けますと、大宗を占めます特別区税は490億9166万6000円となり、額にして20億9698万2000円、率にして4.5%の増収です。特別区全体でも、景気回復を受けて調整三税の税収が上振れしたことで特別区交付金は20億円となり、額にして7億円、率にして53.8%の増が見込まれます。一方、地方消費税交付金は清算基準の見直しにより額にして8億8197万5000円、率にして11.3%のマイナスとなりました。そんな難しいかじ取りが求められる中、複雑化する区民ニーズに応えるべく編成された大型予算案には相当の苦心があったものと拝察いたします。
以下、事業分野に沿って検証してまいります。

まず、子育て分野についてです。
喫緊課題である待機児童対策には38億4700万円をかけて対応します。新設認可園の開設で722人の定員増が図られるほか、居宅訪問型保育の拡大、空きスペースを活用した期間限定保育、企業主導型や認可外保育施設における待機児童枠の確保等、様々な手法が複合的に活用されています。同時に、保育施設のICT化推進に乗り出すこと、さらには助言、指導を行う専門巡回員の設置や区内施設での体系的な研修の導入によって若手保育士を育成していくことは、現在だけでなく未来への投資であり、将来にわたる保育資産になると考えます。
保育士確保に関しては、他職種との賃金の格差を訴える意見もありますが、平成27年度から平成28年度にかけて行った国による公定価格の処遇改善加算及び東京都の補助金によって保育士の平均月額給与は28万7321円まで改善し、さらに、本年度に行われた公定価格の処遇改善加算及び東京都による補助金のアップによって平均月額2万7000円の上乗せがありました。それとは別に、中間層の賃金アップのため国のキャリアアップ枠新設による月額最大4万円の給与加算が実施され、既に全職種平均と同水準に達しています。その上、渋谷区では借り上げ社宅の賃料、礼金、引っ越し代の補助もあります。
東京都内においては保育士不足解消のポイントはもはや賃金ではなく、残業などの負荷の軽減や業務効率化、対人コミュニケーション等にあると言えるでしょう。その意味でも、保育のICT化や専門巡回員の設置による保育士のスキルアップ施策は効果があるものと期待しております。
また、産後鬱を予防するための宿泊型産後ケア事業や要支援家庭を対象とした子どもショートステイ事業は、ともにレスパイトに活用できる点で効果が高いと評価いたします。渋谷区版ネウボラ構築への第一歩として、未来への投資につながるものと考えます。

次に、教育分野ですが、2年目に入るICT教育の本格運用が開始されます。渋谷区の特徴は、セルラー回線を備えたタブレット端末の導入によって学校、自宅、校外学習など、いつでもどこでも共同学習を可能にしたことです。Wi-Fiだけではできなかった指導法の研究、事例の積み重ね等をお願いし、より高いレベルでの渋谷モデルの確立を期待いたします。
また、情報モラル教育が課題になると思いますが、リスクがあるからといって過度にインターネットの機能を制限してしまうと情報活用能力が身につきません。本年度は中学校でもインターネットへのポータルにYahoo!きっずを使用していたようですが、中学生がこれで十分な研究ができるとは思えませんので、学校が管理できる義務教育のうちに、もっと自由な使い方の中で、情報モラルも含めた情報リテラシーの習得に努めていただければと思います。
学校給食につきましては、我が会派がかねてから要望していた栄養士の小中学校全校配置が実現し、高く評価いたします。
コミュニティスクールについて、学校運営協議会の運営費及びコーディネーター費が計上されています。地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正・施行され、全ての公立学校がコミュニティスクールになることを目指し、学校運営協議会の設置が努力義務化されました。渋谷区では本年度、代々木山谷小学校が新たに指定されたことによって小学校では8校中4校目、中学校は既に全校が指定されています。
渋谷区はもともと地域と学校とのつながりが強く、コミュニティスクールに適した土壌があります。地域と学校が連携、協働しながら地域で学校を運営し、逆に学校を核とした地域づくりを進めることにアドバンテージがあると見ています。小学校においても全校指定に向けた計画が図られていることを高く評価いたします。
また、かねてから学校運営協議会はもっと意思決定機関として機能すべきと提言してまいりました。熟議の中で何かを進めようとすると予算が壁となることが多く、平成30年度予算案の中で、学校運営協議会が活動充実のために計画した取り組みに対してその内容に応じた補助金を交付する仕組みを創設することは、大きな前進と高く評価いたします。

次に、福祉分野です。
高齢者福祉については、5月につばめの里・本町東施設が開設されることで特別養護老人ホームの区内ベッド数は631床から731床に拡大し、併設ショートステイも90床から120床に拡大するほか、認知症高齢者グループホームも18人増えて101人となります。
また、都営住宅の建替え時移管制度を活用し、地域の実情に合った複合施設として恵比寿西二丁目複合施設の建設に着手します。区営住宅のほか高齢者福祉施設、障がい者福祉施設及び保育園を併設した地域福祉の中核施設として期待され、誰もが住みなれた地域で安心して住み続けることができる積極的な施設整備を評価します。
高齢者が生涯元気で活躍できるように支援する生涯現役サポートセンター設置に向けた準備予算、1427万円も計上されています。生きがいを持って生活してもらうことが豊かな人生につながり、健康寿命を延ばすことにもなると期待します。
障がい者福祉については、地域の相談支援事業所を指導、育成し、また事業所間のネットワークづくりや情報共有を促進する基幹相談支援センターが開設されます。体系的な相談体制ができることで地域の相談事業の底上げになるものと評価いたします。
新庁舎移転後に知的障がいのある人を臨時職員として雇用し、ジョブコーチも配置します。共生する社会を実現、障がい者の自立及び社会参加の支援といった障害者基本法の理念や、住みなれた場所で可能な限り必要な支援、社会参加の機会の確保といった4月に施行される改正障害者総合支援法の基本理念に沿った施策であり、障がい特性に応じた自立支援につながるものと期待します。

次に、健康・スポーツ分野についてです。
15平方キロメートルの運動場プロジェクトでは、道路等の空間を活用して子どもから大人まで気軽にスポーツができる環境を整備します。各地域で自主的に運営ができるように支援していく方針で、地域コミュニティの活性化を促進するものと考えます。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた関連事業も、リアル観戦の拡充や文化プログラムの拡大及び地域連携、区独自のボランティア制度の創設と、2年後に向けて充実させています。原 大智選手が平昌オリンピックで銅メダルを獲得したことで機運が一気に盛り上がっているところであり、多くの人が参加しやすい周知と運営をお願いいたします。

防災・環境分野です。
新庁舎の完成を機に防災センターが新庁舎内に移転するのに合わせ、新防災システムを導入する予算が計上されています。スマートフォンやタブレットを活用し、区、区民、来街者が互いにつながるシステムです。
また、児童の安全を確保するため、区立小学校18校全校の通学路に設置されている防犯カメラを計50台増設します。
また、新環境基本計画が目指す目標の実現に向け、区民や区内事業者を初め渋谷区に集まる在勤・在学者及び来街者など、多くの人々に普及啓発を行います。
さらに、都市環境の改善という視点では、防災性の向上、交流空間の創出など多様な機能を有する新宮下公園の工事が着工します。三井不動産株式会社とのPPP事業として、民間の資金とノウハウを活用しながら、小さな財政負担で豊かな公共サービスを提供する象徴的な事業となりそうです。

PPPについては、まだ誤解した反対意見もあるようですので一言申し上げますが、大手企業をもうけさせるために区の資産を使うのではなくて、公共サービスを向上させるために、専門技術や経営ノウハウを持つ民間事業者に事業のリスクを負担してもらっているのです。併設する商業施設や隣接するホテルの運営利益を見込んで公園を建て替える仕組みですが、区が直接運営しても、恐らく赤字になるでしょう。こうしたリスクを最も管理できる、そういうものにですね、リスクを負担してもらうことで事業全体のコスト削減と質の高い公共サービスの提供が同時に可能になります。
新宮下公園整備事業では、ディベロッパーやホテル経営に精通した事業者が手がけて初めてリスクをカバーできるのであって、当然ですが、リスクを負担する者がリターンを得るという健全な経済原則にのっとり、自治体もコストの削減と公共サービスの向上が達成できます。
安全・安心なまちづくりのために様々な機能を駆使している点、高く評価いたします。

最後に、コミュニティ分野です。
区民はもとより渋谷で働く人、学ぶ人、遊ぶ人等の技術力、アイデアを集め社会的課題の解決を図ってきた「かもづくりフューチャーセッション」と同様の手法を使って、開発余地の大きい笹塚・幡ヶ谷・初台・本町地区で進めているプロジェクト「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」が実践段階に入ります。新たな協働型のまちづくりとして評価いたしますので、今後は各プロジェクトチームが自走できるような支援をお願いしたいと思います。
また、産官学民連携による組織体、一般社団法人渋谷未来デザインの設立に伴う出資金も計上されています。産官学民が連携し、領域を超えてアイデアや才能を結集することによって新しい公共空間の活用を見出す趣旨はよいと思いますが、共同出資者である協業パートナー以外の事業者が排除されないよう要望しておきます。
渋谷おとなりサンデーが2年目に入ります。平成30年度には笹塚・幡ヶ谷エリアでもショーケースが予定されているとのことで、ササハタハツプロジェクトと相まって地域の魅力を引き出すきっかけになればと期待します。顔見知りになった住民同士がいざというときに助け合える関係まで信頼を深めてもらえれば、地域の足腰が強くなると考えます。
ちなみに、ふるさと納税の影響額は17億円の見込みです。前年が14億6000万円でしたので、額にして2億4000万円、率にして16.4%の増と大きな打撃を受けています。ただ、総務省が昨年7月に発表したふるさと納税の寄附総額は前年比1.7倍で過去最高でしたので、正直なところ、もっと影響があってもおかしくないと予想しておりました。渋谷区が好きで渋谷区に住み愛着を持って納税してくれている人が一定割合いるのかもしれません。
影響額が大きいからといって、渋谷区が返礼品競争に参加し、地方の苦しい自治体から財源を奪い取るようなことはすべきでないと考えています。区民の皆さんに気持ちよく渋谷区に納税してもらうという意味でも、長谷部区長がよく口にされるシティプライドの育成は重要であり、コミュニティ分野の施策全体を通じてその工夫がうかがえる予算になっております。

以上述べましたように、平成30年度渋谷区一般会計予算は喫緊の課題にスピーディに対応しながら未来への投資にも多くの予算を割いている点、また、数々の先進的な取り組みをするとともに生活文化の醸成と発信に注力している点を高く評価いたします。
結びになりますが、シブヤを笑顔にする会は誰もが笑顔で暮らせる渋谷区を実現するために全力でその役割を果たしていくということを表明いたしまして、議案第20号 平成30年度渋谷区一般会計予算の賛成討論といたします。
ありがとうございました。

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本会議で平成29年度一般会計予算に賛成の討論をしました。

平成29年3月31日定例会(第1回)

私はシブヤを笑顔にする会を代表いたしまして、議案第19号 平成29年度渋谷区一般会計予算に賛成の立場から討論いたします。

3月の月例経済報告で、政府は個人消費の判断を3カ月ぶりに上方修正しました。しかし、昨年10~12月期の法人企業統計において経常利益が前年比16.9%増、前期比5.2%増と好調だった企業収益や、完全失業率が前月比0.1ポイント改善し3.0%となり、有効求人倍率が1.43倍と高水準で推移している雇用情勢に比べると、GDPの六割を占める個人消費の改善ペースは力強さを欠いています。また、海外においては米欧の保護主義化への懸念、イギリスのEU離脱問題、北朝鮮のミサイル及び核開発の脅威など不確実性が増し、経済環境は様々な外的要因による下振れリスクを内包しております。
このような経済情勢の中にあって渋谷区の現状を顧みますと、人口は年少人口、生産年齢人口、老年人口の年齢3区分全てにおいて増加し、全国の高齢化率が26.7%と過去最高を記録する一方で、渋谷区の高齢化率は4年連続19%台前半をキープしています。
特別区税収入は469億9500万円となり、額にして5億3600万円、率にして1.2%の増収です。また、渋谷駅周辺は100年に一度と言われる大規模な再開発が進行し、50年ぶりに区役所新庁舎の建替えが進められています。3年半後には東京オリンピック・パラリンピックも開催されます。昨年は20年ぶりに渋谷区の基本構想が刷新されました。渋谷区にとって平成29年度は、まさに新時代への転換点となりそうです。
不確実な時代だからこそ、渋谷区はこれらのポテンシャルを生かして未来に投資することで、少子高齢化問題を初め先進国のどの自治体もいずれ必ず直面することになる宿命的な課題に対して、地方自治の一つの成功モデルを構築すべきと考えます。高度化、複雑化する時代のニーズを的確に捉え、世界に誇れる自治体として責務を果たしていくためには、喫緊課題へのスピードある対応はもちろんのこと、将来を見据えた行財政運営が求められます。

さて、平成29年度の一般会計予算案でありますが、歳入歳出予算額は926億5200万円と前年度当初予算に対して額にして81億円、率にして9.6%の増であります。これは当初予算としては区政史上最大の大型予算です。
重立った歳出では、待機児童対策に46億3000万円、前年比20億7800万円増、率にして81.4%増や、特別養護老人ホーム、認知症高齢者グループホームを要する旧本町東小学校跡地複合施設整備、渋谷区高齢者ケアセンター建替え整備といった高齢者福祉施設の整備に37億9500万円など喫緊課題への対応を強化しつつ、新庁舎ICT基盤整備に4億6200万円、ICT教育の推進に7億8200万円、本区独自の英語教育、しぶやイングリッシュの展開に1億200万円、渋谷に集まる多様な人々の力を結集し、まちづくりを進める渋谷未来デザイン会議に6200万円、自転車走行空間整備、歩道のバリアフリー化、電線共同溝整備による無電柱化などの東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた道路整備に5300万円、観光Wi-Fiの環境整備に2600万円など、よりよい渋谷区を創造するための未来投資についても重点を置いていることを、まず評価したいと思います。

歳入に目を向けますと、先ほど申し上げましたように、大宗を占めます特別区税は469億9500万円となり、額にして5億3600万円、率にして1.2%の増収ですが、実はふるさと納税により控除された幻の区民税が14億6000万円に上り、渋谷区には歳入されません。また、前年度70%ダウンした特別区交付金はさらに15%の減となり、普通交付金は平成22年以来の不交付です。
そんな中で、基本構想の理念「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を力強く推し進めるために組んだ大型予算編成は、相当に苦心されたものと拝察いたします。特別区債の起債や基金の活用など、歳入確保メニューを増やしながら組み上げられた未来投資型予算を高く評価いたします。
以下、基本構想の新たな分野に沿って検証してまいります。

まず「それぞれの成長を、一生よろこべる街へ。」子育て・教育・生涯学習分野についてです。
待機児童対策として、区内保育施設においては平成24年度から平成28年度の5年間で1582人の定員拡大を実施してきましたが、さらに平成29年度は、施設整備計画を一年前倒しする形で809人の定員拡大を行う計画です。加えて居宅訪問型保育事業としてベビーシッター派遣を開始することになりました。かねてから、全て施設で賄うのではなくベビーシッターやチャイルドマインダーを活用してはと考えておりましたので、大いに期待しております。
また、我が会派が要望していた認可外保育施設利用者への保育料助成も実現し、認可外保育施設指導監督基準を満たしている旨の証明書が発行されている認可外保育施設利用者に対して、月額4万円を上限として保育料を助成することになりました。
引き続き待機児ゼロの実現に向けて様々な手法を複合的に活用しながら、さらなる定員拡大をお願いするとともに、昨今は保育所の運営問題も報道されておりますので、本年度から開始した検査指導担当職員による抜き打ち調査を来年度もしっかりと行っていただくことで、安全・安心かつ適切な保育環境を保っていただけるようお願いしたいと思います。
一方、子どもの個性を尊重しながらその発想力や応用力を伸ばしていくことは幼児期においても重要であり、平成28年度より実施しているシュタイナー教育やレッジョ・エミリアアプローチなどの特色ある幼児教育、保育の研究をさらに拡充しています。幼児期を子育てとしてだけではなく幼児教育として位置づけていただき、渋谷区幼児教育プログラムの改定を見据えた実りある視察を期待します。

学校教育においては、グローバル化・情報化社会が加速度的に進展する中、子どもたちが新しい時代の一員として活躍していくために、ICT教育を全面的に導入します。文部科学省の2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会などでの議論がなされているように、ICT教育の推進は国の方針でもあります。区内全ての小中学校に1人1台のタブレット端末、通信環境、電子黒板、デジタル教科書などを配備する計画で、ICT教育の導入が遅かった本区が一気に新しい教育の先頭に立てる事業と高く評価いたします。
しかし、ただタブレット端末を導入しただけでは、もはや新しい教育とは言えません。Wi-Fi環境のある教室内でアクティブラーニングを実施するのは今や当たり前の時代です。渋谷区の特徴は、LTE通信機能を備えたタブレット端末の導入により、いつでも、どこでも共同学習を可能にしたことです。
代々木山谷小学校の実証では、自宅や校外学習においても共同学習を可能にし、児童の学習意欲を向上させたことが大きな成果でした。児童が共同学習ソフトを使用した通信時間を計測したところ、自宅での使用時間が学校での使用時間とほぼ同じ長さになりました。家庭では、共同学習ソフト上のノートを児童が作成するだけでなく、友達が作成したノートを見ることができ、コメントを残すこともできます。児童は学校を離れても、時には自らを表現するツールとして、時には友人とのコミュニケーション媒体として、時にはアイデアを飛躍させる種としてICT機器を使うことを楽しんでいるようです。
2月8日に代々木山谷小学校で開催されたICT教育モデル校公開授業には、他の自治体の教員、行政職員、教育分野にかかわる民間事業者など157名の来訪者があり、注目の高さがうかがえます。1月28日には保護者、地域の方々を主な対象にICT機器を活用した学習への理解を深めてもらうための公開授業を実施したところ、200名以上の来訪者がありました。
授業を拝見してみますと、グループワークの成果を一斉にプロジェクターで投影することで各グループの意見の違いが鮮明になり、議論が進めやすくなります。また、挙手して発言する形式ですと一部の児童しか意見を発表できませんが、タブレット端末に書き込んだ全ての意見がスクリーンに映し出されることで、全員が達成感を持って楽しく授業に臨んでいます。わからないことはすぐにインターネットで検索して発表に反映させることができるのも、ICT教育の強みです。
私が区立小中学校の学校公開や行事等で現場を見て思うのは、児童・生徒の人間的な資質のよさです。もちろん私が拝見できている範囲は数校でしかありませんが、挨拶の励行、行事への主体的な参加など、とてもよい印象を持っています。しかし、人として立派に成長している子どもたちが、もし勉強面でコンプレックスを感じたらかわいそうじゃないですか。渋谷区立の小中学校の子どもたちには日本で一番進んだ教育を受けさせてあげたいと思いますし、私立が競って導入しているICT教育において、少しも劣らぬ環境で学習させてあげたいと考えております。
もしICT教育に拙速な導入という反対意見が出るようでしたら、それはICTの進化の速さを軽視し過ぎています。ウエブ系の民間企業は3カ月単位で新しいメディアを開発する世界です。2年も3年も検討していたら、実施するころにはその内容は既に時代遅れになっています。時には走りながら考えることも必要な分野です。逆に言えば、走りながら考えてもよいのがICTのメリットです。紙の印刷物は完成後の修正はできませんが、ホームページは後から修正できるのと同じです。
私は、会社員時代に就職情報会社で企業向けに人材採用コンサルを長くやりましたが、ICTに精通した人材は企業の高い採用ニーズがあります。ICTに加えて英語ができれば、どこでも生きていけると言っても過言ではないでしょう。教育委員会は自信を持ってICT教育を推進してほしいと思います。新しい取り組みですから最初は教職員の方々にも御負担があるかとは思いますが、時代の流れに沿うものであり、いずれ大きな成果があると確信しております。
英語教育においては、平成32年度から新学習指導要領が完全実施され、小学校3、4年生で週1時間の英語活動、5、6年生で週2時間の英語が教科として実施される予定です。そこで、平成30年度から小学校英語教育の前倒し実施を視野に、ALT派遣日数を倍増することによって子どもたちがネイティブの英語に触れる機会を倍増します。中学校英語教育のさらなる充実を含め、英語教育充実に向けた全体計画、しぶやイングリッシュマスタープランを策定します。グローバル社会を生きる子どもたちに必須となる能力を養成するものとして期待いたします。
また、特別支援教育においては、区内4校目の特別支援教室・巡回指導拠点校を中幡小学校に設置し、特別支援教育担当指導教員を配置します。特別な支援を必要とする児童が増加傾向にあり、より細やかに一人一人に適切な指導及び支援が可能になると評価いたします。

次に、「あらゆる人が、自分らしく生きられる街へ。」福祉分野についてです。
区内の障がい者施設、デザイン専門学校の学生、さらには企業、NPOが連携し、渋谷土産の開発、販売を行います。障がい者施設での作業内容や3Dプリンター、UVプリンターなどのデジタル工作機械の利用方法などを具体化し、製造体制や販売管理システムを構築します。区内の企業やNPOの協力を得て区内での販売拠点を確保する一方、超福祉展などのイベントでプロモーションを展開します。就労する障がい者の支援と渋谷の特産品開発を兼ねた意義ある試みです。
認知症予防、早期対応については、従来の高齢者見守り事業をさらに強化するSOSネットワーク事業を開始し、行方不明になった人を協力者とともに地域全体で探すことができる体制を整えます。認知症の人が行方不明になった場合、協力者へのメールを配信することで直接捜索することを目的としています。また、地域包括支援センターで認知症が疑われている人からの相談や支援を行う際、医師のアドバイスを必要とするケースが多くあることから、認知症相談協力医を配置します。
要介護者の増加への対応については、旧本町東小学校跡地に特別養護老人ホーム、認知症高齢者グループホームを擁する高齢者福祉施設が竣工します。特別区債の発行により調達した資金を充当します。さらに、老朽化のため大規模改修が必要な渋谷区高齢者ケアセンターを建て替え、特別養護老人ホームを中心とした高齢者福祉施設の整備に着手します。さらには恵比寿西2丁目複合施設にも認知症高齢者グループホームを整備する計画があり、積極的な取り組みを評価いたします。

次に、「思わず身体を動かしたくなる街へ。」健康・スポーツ分野についてです。
五十歳以上の偶数年齢者に対し、胃内視鏡検査を新たに導入します。胃内視鏡検査による死亡率減少効果が認められ、がん検診実施のための指針が改正されたことに伴うもので、より正確な検診ができるものと期待します。
東京オリンピック・パラリンピック2020大会まで3年余となり、誰もがスポーツを楽しめる環境を整備するため、区民アンケートを踏まえたスポーツ推進計画を策定します。スポーツをする機運醸成だけでなく、スポーツ関係団体等の参画意識の向上、民間等の連携・協力態勢整備等、総合的なスポーツ推進が図られるものと考えます。
また、区内競技種目である卓球、ハンドボール、パラ卓球、ウィルチェアラグビー、パラバドミントンを間近で観戦するオリンピック・パラリンピック競技リアル観戦事業も拡充します。競技の迫力や魅力、選手の躍動感を体感し、選手の最高峰のプレイを応援することで区内競技種目への興味、関心を高められます。

次に、「人のつながりと意識が未来を守る街へ。」防災・安全・環境・エネルギー分野です。
渋谷区内の犯罪発生件数は年々減少傾向にあるものの、不審者情報など寄せられていることから児童の安全確保は急務と考えます。区内小学校18校全校の通学路に各5台の防犯カメラを設置します。子どもたちの安全を確保するため、徹底した対応をお願いしたいと思います。これまでの録画による事後対応にとどまらず、現場で直ちに対応可能なライブ方式のカメラも将来的には期待したいと思います。
また、帰宅困難者を一時退避場所に誘導する新たな周知方法として、一時退避場所の方向を平時からサインにより来街者に示し、知ってもらうシブヤ・アロープロジェクトが計画されています。2020年に向けて増加が予想される外国人来街者にも親切な施策と考えます。平成25年渋谷区地域防災計画によれば、区内滞在者推計52万9282人のうち帰宅困難者は42%の22万2342人であり、職場や学校などの所属場所がないために発災時に屋外で滞留する人数は5万3509人と推計されています。こうした帰宅困難者を的確に誘導することによって区民が避難する避難所への流入が避けられ、混乱を防止するのに有効な手段になるものと考えます。
また、避難所では現在備蓄している避難所ボードにかえて、誰もが容易に設置でき、より高いプライバシーが確保できるワンタッチ式のパーティションを段階的に配備します。平成28年熊本地震の例を見ても、避難所生活が長期化すると精神的な疲労が蓄積するため、プライバシーへの配慮は必要と考えます。
我が会派が要望していたペット同行避難対策も継続されています。今後は畜犬登録の促進によって飼育実態を把握し、ペット疎開実施に向けた施策拡大も期待いたします。
また、木造住宅等が密集する本町地区の防災性を向上させるための各種整備が進みます。不燃性の高い住宅への建替え、道路の拡幅、公園、ポケットパーク等のオープンスペースの確保など都市基盤の整備のほか、大規模地震の際の火災原因は通電火災によるものが多いことから、新たに木造建築物に係る感震ブレーカー整備事業を実施し、機器が無償配布されます。昨年12月に発生した新潟県糸魚川大火災を見ても、火災発生時の延焼の怖さは明らかです。実態に合わせた施策と評価いたします。

次に、「愛せる場所と仲間を、誰もがもてる街へ。」空間とコミュニティのデザイン分野です。
区民はもとより渋谷で働く人、学ぶ人、遊ぶ人などの技術力、アイデアを集め、社会的課題の解決を図る新しい取り組みが始まります。産官学民連携による組織体、渋谷未来デザイン会議の設立に向け準備室を設置します。
平成28年度に“かも”づくりフューチャーセッションで生み出されたアイデア、アクションの種を実現に向けて検証し、引き続き“かも”づくりフューチャーセッション、「渋谷をつなげる三十人」も開催します。審議会や協議会形式のまちづくりと違い、参加者が主体となって自走型のプロジェクトが期待でき、「YOU MAKE SHIBUYA(夢行く渋谷)」の理念に合致した事業として大きな可能性を感じます。ただし、夢はつかみ取るものですので、行かないでほしいと願っておりますが、行政でも企業でもなく、みんながつくる渋谷というコンセプトには大いに賛同いたします。
また、電車やバス路線網を補完する公共交通機関として、気軽に自転車を借りて返却することができるシステム、コミュニティサイクル事業を始めます。平成29年度は20ポート、200台の整備が予定され、将来的には50ポート、500台を当面の目標とします。近隣区の千代田区、中央区、港区、新宿区、江東区、文京区で既に実施されているシステムとの共用で、区外への移動、乗り捨てなども可能とします。東京2020オリンピック・パラリンピック大会までにはコミュニティサイクルがさらに拡大することを目標とするものですが、所有からシェアへという社会の動向に自転車のような交通手段も合わせる試みとして、時代を捉えた事業と判断いたします。
また、2020年に向けた道路整備として、4つの事業が進められます。歩行者、自転車、自動車がより安全・安心、快適に通行できるように自転車走行空間整備、来街者の歩行空間の確保とともに美しい街並み形成を目指す電線共同溝整備による無電柱化、歩道の段差解消、勾配の改善、視覚障がい者用誘導ブロックの改良を実施する歩道のバリアフリー化、競技会場周辺の暑熱対策を目的とし、遮熱性舗装の整備を実施する環境対策型舗装の整備ですが、いずれもオリンピック・パラリンピックのレガシーとして魅力的な道路空間をもたらすものと考えます。

次に、「あらたな文化を生みつづける街へ。」文化・エンタテイメント分野です。
渋谷区では渋谷駅周辺の広場、公園、道路、施設等を中心とした区内の各地で音楽、ファッション、アート作品、ダンス等の様々なジャンルのイベントが開催されています。「渋谷ズンチャカ!」「渋谷芸術祭」「渋谷ストリートダンスウィーク」は定番になりましたが、平成二十九年度からは「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」ジャズフェスティバルの殿堂「東京JAZZ」も渋谷で開催されることが決定しています。主催は実行委員会形式等、様々ですが、渋谷区が共催や後援など積極的にかかわっていくことで、地域社会の活性化につながります。今定例会の代表質問で我が会派の薬丸幹事長が提案した「文化・芸術三昧 秋の渋谷」を広く発信することで、さらにイベント相互の相乗効果があらわれるものと考えます。

次に、「ビジネスの冒険に満ちた街へ。」産業振興分野です。
渋谷駅、原宿駅周辺その他で観光Wi-Fiの環境を整備します。次年度以降も民間事業者の設置状況などを見ながら設置エリアを拡充していき、あわせて災害時の防災用ポータルへ切り替わる仕様など、有効な情報発信ツールとして利活用も図っています。海外からの来街者の場合、旅行中に困ったことの上位にWi-Fi環境が挙げられ、国際観光都市を目指す渋谷区にとっては遅過ぎるぐらいです。ただ、平成29年度はエリアが限定的なため、郊外への回遊性を促進するためにも次年度以降は大胆な展開を期待いたします。
区内で創業を目指す方向けに、創業時に大きなアドバンテージを受けられるシブヤビジネスコンサルティングの拡充が図られています。平成27年10月に産業競争力強化法に基づく認定を受けた「創業支援事業」ですが、大きなビジネスと小さなビジネスが理想的に協働する街を実現するために有用な事業と期待いたします。

最後に、計画の実現と持続可能な行財政運営についてです。
平成29年度は20年ぶりに策定した新たな基本構想のもとで迎える最初の新年度であると同時に、今後10年間の区政運営の基本方針である渋谷区長期基本計画2017-2026の初年度であり、今後3年間で進めるべき渋谷区実施計画2017の初年度です。
まず、基本構想が掲げる区のビジョン「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を区民を初め来街者へ発信するため、専用ウエブサイトを開設し、意見を集めるツールとしても活用します。さらに啓発のためのワークショップを実施し、参加者が主体的に考えることで渋谷区に対する愛着や誇りを醸成します。さらに、社会で活用が進むAIをいち早く基本構想アンバサダーに採用し、区民、来街者との新たなコミュニケーション方法を模索します。他の分野への応用も視野に入れた意欲的な試みと考えます。
行政サービスの推進に当たっては、様々な分野で強みを持つ区内企業の技術、ノウハウ、人的支援を区政に生かし、ともに発展していく公民連携の強化を高く評価いたします。
持続可能な行財政運営のためには、小さな財政負担で豊かな公共サービスを生み出す行政手法が重要です。例えば、企業、大学、NPO等と協働して地域社会の課題を解決していくための包括連携協定、「シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定--S-SAP協定」を増やしていきます。あるいはネーミングライツでは、喫煙所のあったハチ公前広場に女性専用パウダールームを設置し、プロポーザル方式の公募により民間事業者が選定されました。設置費用、ランニングコストも含め4年6カ月で3億7000万円分を同社が負担し、さらに年間10万円を命名権料として区が歳入します。
平成28年度に、公共施設等の現況及び将来の利用需要の見通しを踏まえた上で渋谷区公共施設等総合管理計画を策定しましたが、平成29年度からは各公共施設等のより精緻な個別計画の策定に着手します。学校、区施設等、老朽化への対策に大きな支出は不可避です。一方で、民間事業者が一定のリスクを負担するかわりに公共施設の運営を事業提案できる民間提案方式、いわゆるプロポーザル方式の導入により、従来の行政機関の経験と発想ではできなかった事業が可能になり、財政負担も抑えることができます。民間事業者のノウハウをフルに活用し、すぐれたモデルケースを数々創出していただきたいと期待します。

以上述べましたように、平成29年度渋谷区一般会計予算は喫緊の課題にスピーディに対応しながら将来にわたる教育の発展、区民福祉の増進、文化の向上を図る未来投資型予算と言えます。長谷部区長の決意が込められた予算編成と受けとめ、高く評価するものであります。
結びになりますが、シブヤを笑顔にする会は、誰もが笑顔で暮らせる渋谷区を実現するために全力でその役割を果たしていくことを表明いたしまして、議案第19号 平成29年度渋谷区一般会計予算の賛成討論といたします。
ありがとうございました。

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本会議で平成28年度一般会計予算に賛成の討論をしました。

私は、シブヤを笑顔にする会を代表いたしまして、議案第30号 平成28年度渋谷区一般会計予算に賛成の立場から討論をいたします。

平成28年3月31日本会議

平成28年3月31日本会議

3月の月例経済報告で政府は、景気判断を5カ月ぶりに下方修正しました。「海外経済で弱さがみられており、中国を始めとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある」と指摘しており、GDPの6割を占める個人消費の低迷、企業の収益環境の悪化も懸念されます。また、パリ、ブリュッセルと続いたテロの脅威、北朝鮮の核兵器開発疑惑など、経済環境は様々な外的要因による下振れリスクが存在しておりまして、歳入の中長期的な見通しは予断を許しません。このような経済情勢の中でも、複雑化・高度化する区民ニーズを的確にとらえ、世界に誇れる自治体として責務を果たしていくためには、攻守にわたりバランスの取れた行財政運営が求められます。

さて、平成28年度の一般会計予算案でありますが、歳入歳出予算額は845億5200万円と、前年度当初予算に対して、額にして12億800万円、率にして1.4%の減であります。これは、新庁舎・公会堂整備事業における仮庁舎整備が完了したことによる歳出予算の減が主たる要因ですが、歳入予算に目を向けますと、区政の政策効果ともいえる生産年齢人口の増加と、前年までの景気回復に伴う区民所得の増加とによって、特別区民税が13億4600万円の増収、率にして3%のアップが見込まれる反面、特別区交付金が前年比70%ものダウン、39億3200万円の減収となっており、様々なアイディアで勝負するスタイルの長谷部区長が、初めて臨んだ本格予算編成は、相当に苦心を重ねられたものと拝察いたします。しかしながら、そのままであれば数十億円分の区民サービスをあきらめざるを得ない状況にあって、これまで積み増してきた基金を取り崩すことなく、区民福祉、防災、待機児対策等の多岐にわたる区民課題への対応を強化しつつ、前年度とほぼ同規模での予算編成を実現されたことを、まず評価したいと思います。そして、予算中には長谷部区長が目指す特色ある新規事業が積極的に盛り込まれています。4月に開局を迎えるコミュニティFM「渋谷のラジオ」、避難所の備蓄食料品のアレルギーフリー化とペット同行避難への対応、シリコンバレーヘの青少年派遣研修、性的マイノリティとの分野別意見交換会や教職員へのセクシャルマイノリティ研修、民間施設を活用した保育施設拡充および先駆的幼児教育・保育の研究、東京オリンピック・パラリンピックを契機とした障がい者スポーツへの支援や障がい者への理解と新たな価値観の創造、様々な人たちが街づくりの当事者として関われる「アーバンデザインセンター渋谷」の設立、新宮下公園等整備事業・道玄坂一丁目地区再開発事業にみられる安全で快適な国際都市整備など、将来にわたってあるべき渋谷区の姿がうかがえる多くの施策が組み込まれています。

限られた財政にあってこれを可能にしているのは、区長がよく口にされている「公民の連携・協業」の推進であり、様々な分野で強みを持つ区内企業の技術・ノウハウ・人的資源を区政に活かし、共に発展していく施策によるものと考えます。区民負担を最小限に抑えつつ、豊かな公共サービスを生み出すレバレッジの効いた予算編成は、いわば「民間活力推進予算」として高く評価いたします。以下、重点施策に沿って検証してまいります。

まず、災害対策です。発災時には、ヒカリエの防災センターで状況を集中的に把握し、渋谷区内の小中学校など32か所の避難所、26か所の帰宅困難者支援施設、10か所の出張所と、情報ネットワークを形成し、渋谷区防災ポータルサイト、防災無線、防災メールなどでの情報を発信していく体制が整って おりますが、平成28年度はさらに、災害に強い情報インフラと言われるFM放送を活用した「渋谷のラジオ」での情報発信や、東京電力が設置する「地上用変圧器」を利用した「災害時帰宅困難者支援施設地図」の増設を予定し、区内主要幹線道路沿い18か所に案内板の掲示を実施します。
平成25年「渋谷区地域防災計画」によれば、区内滞在者推計52万9282 人のうち、帰宅困難者は42%の22万2342 人であり、職場や学校などの所属場所がないために発災時に屋外で滞留する人数は5万3509 人と推計されています。こうした帰宅困難者を的確に誘導することによって、区民が避難する避難所への流入が避けられ、混乱を防止するのに有効な手段になるものと評価いたします。
また、避難所では、備蓄食料をすべて入れ替え、アレルギーフリー食3日分を用意します。わが会派が強く要望していたペット同行避難対策も導入され、ペットを飼育する区民も安心して避難できる環境が整います。これをきっかけに、今後はペットフード等の避難所配備に留まらず、畜犬登録の促進によって飼育実態を把握し、「ペット疎開」実施に向けた施策拡大も期待いたします。
また、平日に実施していた総合防災訓練を休日に移行し、観る訓練から体験する訓練へ拡充するほか、渋谷駅周辺再開発事業等の進捗に合わせ、PDCAサイクルにより防災対策を見直す方針が示されており、実情に合わせた「生きた防災」として評価いたします。

次に情報発信力の強化についてです。平成28年4月に開局を予定しているコミュニティFM放送局「渋谷のラジオ」は、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてますます増加が予想される外国人観光客への情報発信の強化とともに、一方通行になりがちな広報メディアを区民参加型にすることによって、地域コミュニティの活性化を促す狙いがあります。地域の行事や地元のスターを紹介するなど、区民の交流が図られる番組づくりが定着すれば、 災害などの緊急時も防災無線を補完する役割が期待できると考えます。
広報紙「しぶや区ニュース」が刷新され、8ページから12ページへの増ページと、配布方法を新聞折込主体から全戸ポスティング主体の配布方法に変更することによる、12万部から16万6000部への増部数が予定されています。「渋谷のラジオ」同様、区民参加型の特集・企画ページの充実によって、区民の区政に対する関心が高まること、地域活動への積極的な参加が促進されることを期待します。

次に子育て支援についてです。区内保育施設においては、平成23年度から平成27年度の5年間で1376人の定員拡大を実施してきましたが、さらに平成28年度360人、平成29年度274人、平成30年度536人の定員拡大を行う計画で、区長をはじめ執行部の真剣なご努力の跡がうかがえます。しかし認可保育園の申し込み者は平成27年4月に1464人であったのが、平成28年4月では1735人と加速度的に増加しており、待機児ゼロの実現に向けて様々な手法が求められています。
平成28 年度は、25億1200万円を計上し、認定こども園1園の新設、民間施設を活用した保育園2園の新設等で、保育施設の園児定員を360 人増やせる点、また、区内での土地の確保が困難な状況を考慮し、民間施設等を活用した賃借物件による保育施設の開設にあたっては、4000万円の予算計上により、国の制度に基づく補助に上乗せする形で、渋谷区独自の賃料補助制度を新設する点を評価いたします。今後も様々な手法を複合的に活用しながら、さらなる定員拡大をお願いします。
一方、わが会派がかねてから提言していた特色ある幼児教育・保育施策が研究段階に入ることになり、より質の高い教育メソッドを追求する姿勢を支持いたします。子ども一人ひとりの個性を尊重した先駆的幼児教育・保育を実現するために、シュタイナー教育やレッジョ・エミリアアプローチについて実りある視察を期待します。

平成28年3月31日本会議

平成28年3月31日本会議

次に人材育成についてです。未来を担う人材を育成するため、フィンランド、中国への青少年派遣研修に加え、新たにシリコンバレーに区立中学校の2 年生16名を派遣します。スタンフォード大学や世界最先端企業での現場体験が  計画されているということで、グローバル社会に対応した国際的視野を拡げる絶好の機会と高く評価します。ここでお願いしたいのは、IT産業を学ぶというだけではなく、経営という職業を学んでほしいと思います。日本のキャリア教育では、どうも経営を職業のひとつとして捉えられていないところがあり、技術力は高いがビジネスでは勝てない日本企業の弱点に繋がっていると感じています。ITベンチャーの集積地シリコンバレーで学び、世界で活躍する経営者をめざす人材が渋谷区から出てくることを期待します。

次に高齢者福祉についてです。すべての高齢者が、住み慣れた地域に安心して住み続けられるという基本理念を実現し、高齢者個々の事情に応じた多様なニーズに応えるため、単身高齢者向け住宅として幡ヶ谷原町住宅がオープンします。旧「都営幡ヶ谷原町住宅」を、建替時移管制度を活用して整備した物件ですが、管理戸数も東京都管理時の6戸から37戸へと6倍以上に増加します。さらに、幡ヶ谷二丁目に計画中の複合施設においても38戸の高齢者、障がい者、一般世帯向け住宅の建設を進めるほか、都営恵比寿西アパートの 移管に合わせ区営住宅をベースとした複合施設の計画もあり、高齢化が進む中、高齢者の住環境向上に向けた取り組みが進んでいることに安心感を覚えます。
増加が予想される認知症高齢者への施策としては、早期発見・早期対応体制を強化するとともに、認知症高齢者本人やその家族への支援を行います。認知症の症状が見られるが、支援や医療・介護を拒否している人に対し家庭訪問等を行う認知症初期集中支援チームを、現在の1 チーム から4 チームに拡充し更なる早期対応を図るとともに、認知症高齢者本人を地域で支える体制強化のため、認知症サポーター養成講座の拡充を図るなど、大きく前進しています。

次に安心して暮らせるまちづくりです。繁華街における悪質な客引き・路上スカウト行為を禁止するため、平成26年に「渋谷区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」を制定し、まちの治安や区民・来街者の快適性維持に努めてきましたが、依然として違反行為が後を絶たない状況にあることから、警察官OBを客引き行為等防止指導員として配置し、条例の実効性を担保します。
受動喫煙対策としては、世界有数の観光スポットとなった渋谷駅前スクランブル交差点に面するハチ公前広場の2か所の喫煙所を撤去・移設し、跡地にネーミングライツによるパウダールームを整備します。国際都市にふさわしい施策と評価いたします。

次に新宮下公園等整備事業など渋谷駅周辺再開発についてです。新宮下公園等整備事業は、老朽化した宮下公園と渋谷駐車場を、東京オリンピック・パラリンピック開催までに一体的に整備し、「世界に誇れる立体的な都市公園」とするため、昨年の第4回定例会で三井不動産株式会社との基本協定締結および定期借地権の設定について可決・承認した事業です。民間の資金とノウハウの活用により、小さな財政負担で豊かな公共サービスを実現する  PPPを基本スキームとしていますが、反対意見の中には公設民営と混同しているように思われる主張もありますので、ひと言申し添えたいと思います。
平成23年に改正PFI法が施行され、民間が一定のリスクを負担する代わりに公共施設の運営権を得られるようになりました。それとともに、民から官へ事業提案ができる民間提案方式、いわゆるプロポーザル方式の導入が認められたことによって、従来の行政機関の経験と発想ではできなかった事業が実現可能になりました。つまり、一定の条件を満たしていれば、例えば公園の価値を最大限に活かすためにホテルを一体的に整備するような付加価値を伴った民間提案も可能です。その際、「企業の儲けのために区の資産を利用するのは問題」というような意見もあるようですが、民間施設部分が儲かるとは限らないわけで、儲かるかどうかは当該民間事業者の経営努力によるものです。リスクを分担した者がリターンを得るという健全な経済原則に基づいています。また、公園・駐車場等の区施設部分については区が事業費を試算できますが、民間事業者がリスクを負担する民間施設部分の事業費まで区が関知できるものではなく、公が決めて民が運営する「公設民営」とは根本的に違うのです。本事業は、プロポーザル方式のPPPによって民間事業者のノウハウをフルに活用し、「緑と水の空間軸の形成」、「地域の賑わいの創出」を実現することによって新宮下公園が観光拠点となるほか、防災機能も強化されるなど、優れたモデルケースになるものと確信いたします。

次に、オリンピック・パラリンピックへの取り組みと障がい者への理解促進についてです。すべての公立小中学校・幼稚園をオリンピック・パラリンピック教育推進校に指定し、オリンピック・パラリンピックについての学習や諸外国の歴史・文化など国際理解を促進する教育、体育授業等の改善、部活動の推進、オリンピアン・パラリンピアン、アスリートやスポーツ指導者との交流など、幼児・児童・生徒の発達段階に応じて様々な取り組みを実施します。
さらにパラリンピックの可能性と新たな価値を提起するため、区内で競技が行われるウィルチェアーラグビー、卓球、バドミントンについて、練習会場を提供するとともに、パラリンピアンらのデモンストレーションによる競技紹介や、パラリンピック競技のルールや楽しさを伝えるオリジナル紙芝居など、特にパラリンピックに関する取組への力の入れ方は特筆に値します。パラリンピアンが華麗に挑戦する姿を身近で感じ、限りない人間の可能性に共感することによって、心のバリアフリーが「レガシー」として定着することを願って大いに賛成いたします。

以上述べましたように、平成28年度渋谷区一般会計予算は、区民福祉を確実に増進させ、教育文化の向上を図りながら、小さな財政負担で豊かな公共サービスを実現する「民間活力推進」予算であります。区政課題の解決に向けてスピーディーかつクリエイティブに取り組もうとする長谷部区長の決意を示した予算編成と受け止め、高く評価するものであります。

最後に、シブヤを笑顔にする会は、渋谷区を、誰もが笑顔で暮らせる街にするために、全力でその役割を果たしていく覚悟でおります。そのことを表明いたしまして、議案第30号 平成28年度渋谷区一般会計予算に賛成の討論といたします。ありがとうございました。

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